Round2 Aizawa Keiji vs. Makihara Takuya

By Syouyama"傍観者"Youhei

Round1のフィーチャーマッチが去年の優勝者なら、と。
Round2は一昨年の優勝者である相澤”AKKA”恵司の試合をお届けしたいと思う。


初代東京都チャンプ、AKKA
嘗て悪名高き親和全盛の時代に2000を超えるレーティングを保持し、「スタンダードにおいては右に出るものなし」とまで言われた相澤だが、
本ラウンドは「絶対勝つ!死んでも勝つ!」と試合前から鼻息が荒い。対する牧原とは何やら因縁めいた関係のようである。

その牧原であるが、高校選手権優勝チームに所属した経験を持ち、普段は渋谷フォーラムで活動をしている強豪のようだ。
いわばこれからのトーナメントシーンを担う第3世代といったところか。

デッキの出来について聞いてみると、「ただの趣味ですよ」と、軽くはにかんで謙虚な笑顔を見せた。
だがその目の奥には確かな光を宿してるように思える。

同じことを相澤に聞くと、「結構いいんじゃないかな」と、いつもの不敵な笑いを浮かべる。

早くも嵐の予感である。


Game 1
先攻後攻はダイスロールにより決定する。

フィーチャーマッチエリア
試合の前でも気合を忘れない相澤。勢い良くダイスを転がすが、
4を出した牧原に対し1を出して後攻を選択することを余儀なくされてしまい、意気込みは空回り。

ダイスの目は相澤の闘志に応えてはくれなかったというわけだ。
悪い予感が的中しないと良いのだが…。

先攻の牧原は軽快にキープを宣言。
後攻の相澤も手札をじっと見つめた後に「キープ。」と、一言。

互いの場に青マナが並ぶ立ち上がりである。
青VS青。別の意味である種の予感を感じずにはいられない。

牧原が島2枚。
相澤が島と《ウルザの魔力炉/Urza's Power Plant》を置いたところで少し考え、《イゼットの印鑑/Izzet Signet》をキャスト。

これが無事に場に出、帰す牧原は《トロウケアの敷石/Flagstones of Trokair》を置くのみでターンを返す。
見えている情報からでもわかるとおり相澤はお馴染みイゼットトロン、牧原のデッキは青と白を使ったデッキであることが確定した。

ここまでの両者の動きから、どうやら互いにコントロールデッキであるようだ。
プレイヤーの力量が試されると言われるコントロール同士の戦いで、二人の巧者はどう動くのか。

互いに土地を置くのみで順調にターンは進み、《熟慮/Think Twice》の表裏を経由して中盤に差し掛かる前に相澤は「ウルザトロン」を完成させる。

マナがそろえばこっちのもの、とばかりにまずは小手調べに《強迫的な研究/Compulsive Research》をプレイ。
牧原はこれを通す。

相澤はディスカードに悩むが《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》と《電解/Electrolyze》をディスカード。
手札は相当濃いのだろうか。「動くにはまだ早い」相澤の目がそう語る。今はマナを伸ばして来るべき時のために備えようという意思が伺える。

牧原の手札を覗くと、除去とカウンターが溢れていて能動的に動くことは出来ないようだ。
どうやら古典的な青白パーミッションらしい。受動的なデッキなだけに、こうなるとなかなか動きづらい。

一時的に牧原の土地が止まる場面もあり、相澤とはみるみるうちにマナに差がついていく。
牧原の表情が示すとおり、苦しい展開だ。

場にようやく6マナが揃ったところで牧原は相澤のターンエンドに《ミューズの囁き/Whispers of the Muse》をバイバックで。
ん?バイバック?

そういえば本ラウンドの「お題」は全プレイテーブルで一番先に「対戦相手にバイバックされること」であった。
東京都選手権に参加された方は既にご存知かとは思うが…。
運営側より、大会を盛り上げる趣向としてこれを満たしたものには1パックのボーナスが与えられることになっているのである。

一応確認をとってみると、なんとかなりの時間が経過しているにも関わらず、条件を満たした初めてのテーブルとなった。
まさかフィーチャーテーブルで「お題が」達成されようとは両プレイヤーどころか筆者さえも想像していなかった事態で、これには全員苦笑い。

改めて視点をゲームに戻そう。

相澤は先の《ミューズの囁き/Whispers of the Muse》に対し《差し戻し/Remand》をプレイ。
牧原はこれを承諾。

牧原は土地は土地でも《幽霊街/Ghost Quarter》を置いてターンを返す。
どうやら自分のマナを伸ばすことが優先と判断したらしく、相澤のウルザ地形を壊そうとはしない。

返す相澤は意味深な《蒸気孔/Steam Vents》アンタップインの後にターンを返す。
今のイゼットトロンの構成を考えるに、このプレイの意味はひとつ。

知ってか知らずか牧原はさらに相澤のエンドにフルタップで《ミューズの囁き/Whispers of the Muse》をバイバック。
相澤は待ってましたとばかりに《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を合わせ打ち。
過去、時代を築いた1枚

当然これが通ってしまい、牧原のライフは15点に減少。これが初ダメージだ。
相澤のライフは土地からのもので16点に減っており、牧原は未だ相澤の体に触れてはいない。

場に《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を通してしまったにも関わらず牧原は涼しい顔。そう、牧原の手札には除去が眠っているのである。
《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》が襲い掛かるが、牧原は慌てず騒がずこれに《糾弾/Condemn》。

相澤は《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite》を守ろうと《撤廃/Repeal》をキャストするが、
これには即《取り消し/Cancel》と、ぬかりの無い牧原。

マナには若干の差があるものの、これで振り出しに戻ってしまった。
両者一歩も譲らない展開である。

相澤はさらに《強迫的な研究/Compulsive Research》を続けてキャストし、手札の充実を図るが決め手は引かないようである。
この局面においても淡々とマナを伸ばすのみでターンを返す。

と、着々とマナを伸ばし遂には8枚の土地を並べたところで牧原が動いた。

《ウルザの工廠/Urza's Factory》を経由して相澤の毎ターンエンドにトークンを生産していこうという構え。
地味ではあるがこれに根本的に対処できない相澤。これで悠長に構えているわけにもいかなくなった。
ウルザ地形を有するウルザトロンを苦しめるのが、同じ「ウルザ」の名を冠する土地であるとは皮肉なものである。

ともあれ相澤は数ターンのうちに勝利に繋がる「何か」を引き込まなければ。

ここからは相澤の毎ターンエンドに牧原がトークンを出しては、相澤が

《撤廃/Repeal(GPT)》、《撤廃/Repeal(GPT)》、《電解/Electrolyze(GPT)》、《電解/Electrolyze(GPT)》

と、除去の合わせ打ちをしていく展開が続く。
相澤に主だった動きが無かったのはこれらを手札に抱え込んでしまっていたからであろうか。

気がつけば両者の場には合わせて二十数枚を超える土地が並んでいる。
もはやマナの差は埋まったと言えるだろう。
ここからは引きとプレイングの勝負。技巧の綱渡り。

真の意味のマジックが待っている。

と、相澤のエンドに1体のトークンが生産され、ついに場に生き残るに至った。
そして止まっていた時が動き出す。
1体、また1体と量産されていくトークンが横倒しにされ、時を刻んでいく。
この局面における時というのは即ちライフそのもの。
過去、時代を築いた1枚

相澤に残された時間はあと僅かだ。

3体目となるトークンを並べ、アタックをしたところで相澤は3枚目となる《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite(TSP)》をキャスト。
牧原にしてみればやっと掴んだイニシアチブである。ここで手放すわけにはいかない。

小考の後、牧原はこれに対して《巻き直し/Rewind(9ED)》を。
実は牧原の手の内には《吸収するウェルク/Draining Whelk(TSP)》が力を発揮するときを今か今かと待ち構えているのだが、これは温存する構えのようだ。

この《巻き直し/Rewind(9ED)》に対し相澤は《差し戻し/Remand(RAV)》、
それに対しさらに牧原が《呪文嵌め/Spell Snare(DIS)》と、激しいカウンター合戦が始まる。

結局牧原の《巻き直し/Rewind(9ED)》が通り、《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite(TSP)》は墓地へ。
牧原の優位は揺るがない。


まっきぃの愛称で呼ばれる
牧原
さらに《巻き直し/Rewind(9ED)》の効果により4枚の土地がアンタップ。
こういう局面でこのスペルは無類の強さを発揮する。

隙を見せずにターンを返せるため、相澤がさらに動きにくくなった。

どちらにせよ終焉は、近い。

相澤は深く考えた後にメインで4枚目の《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite(TSP)》!!
ここまで引き込んでいる相澤も強いが…それにきっちり《巻き直し/Rewind(9ED)》で応える牧原の勝負強さも相当なものである。
《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite(TSP)》は素直に墓地に置かれ、万策尽きたかに思われる相澤だが…。

不意に相澤の手から零れ落ちる《悪魔火/Demonfire(DIS)》。
「1点で。」

ん?1点?
弾かれたように素早く相澤の手札へと目を走らせる牧原。
相澤の残る手札の枚数は…1枚だ。

使用するということも含めて、イゼットトロンとの対戦を一度でも経験したことのある方ならこのシーンにある種の既視感を感じずにはいられないだろう。
この状況下においてこのプレイが導き出す結論は、ひとつ。

相澤、手札を空にした末の暴勇状態で渾身の《悪魔火/Demonfire(DIS)》!!!
牧原の残りライフを考えても彼を死に至らしめるだけのマナは十分にある。

あとは牧原次第といったところか。
祈るように《ミューズの囁き/Whispers of the Muse(TSB)》を素打ちする牧原だが…。

どうやら万策尽きたのは牧原のほうであったようだ。
そして悠久とも思える時を経て、長い長い1本目が終わりを告げた。

相澤は決め手を引けなかったのではなく、虎視眈々と勝利の瞬間を狙っていたのだ。
ほぼラストターンとも言えるこの時に示し合わせたようにゲームを決めてみせる相澤には勝利への執念と計算高さを感じずにはいられない。

相澤の勝利への執念が、牧原のそれを上回った瞬間だった。

相澤 1-0 牧原


Game 2
この時点で残りは15分弱。
先ほどと比べて相澤の気合はさらに増したように見える。
思い返してみると彼は元からこういうキャラだったであろうか。

否、マジックというゲームにかける彼の情熱が彼をそうさせるのだろう。

急かされるようにゲームを始める両者。
残り時間は少ない。

牧原は、
《島/Island(TSP)》
《島/Island(TSP)》
《島/Island(TSP)》
《赤の防御円/Circle of Protection: Red(9ED)》
《赤の防御円/Circle of Protection: Red(9ED)》
《マナ漏出/Mana Leak(9ED)》
《取り消し/Cancel(TSP)》      …という手札を一瞥してキープ。
1本先取している相澤とは違い、牧原には後が無い。
引き分けでも負けでもなく、確かな勝ち星をあげねばならないのである。
そのためには是が非でもアクティブに動ける手札をキープしたいところであるが…。
ここはデッキ的に仕方ない、と割り切ったのであろうか。兎にも角にも、彼はキープを宣言した。

対する相澤も静かにキープを宣言。
かくして再び、両者マリガンなしでゲームは開始した。

時間が押している事実とは裏腹に、先ほどと比べてさらにゆったりとした展開。

初動は牧原であった。
白マナを引き込んだ牧原は、先攻5ターン目に3マナを残して《赤の防御円/Circle of Protection: Red(9ED)》をプレイ。
相澤は意味深に土地を倒すそぶりを見せるが、これを通し、エンドにそれへと《撤廃/Repeal(GPT)》を。

そして印鑑を置いたのみでどっしりと構え、ターンを返す相澤。

牧原は再び《赤の防御円/Circle of Protection: Red(9ED)》をプレイするがこれには更に《撤廃/Repeal(GPT)》。
先ほどのターンと全く同じ光景が繰り広げられる。

そしてキャントリップに助けられ、遂にウルザトロンを完成させる相澤。
満を持して送り出すは《道化の王笏/Jester's Scepter(CSP)》!
直接勝利に結びつくカードではないが、相澤は1本先取しているためにこのゲームは引き分けでもいいのである。

「今の俺にはこれで十分。」と言わんばかりに牧原の様子を不敵に伺う相澤。

場が膠着してはたまらない、と。
文字通りこれを《取り消し/Cancel(TSP)》さんとする牧原だが
秒で《差し戻し/Remand(RAV)》され、《道化の王笏/Jester's Scepter(CSP)》は場へと出てしまう。
こうなってしまうと牧原は苦しい。なんとか解決策を見出したいところだが。

相澤は続けて《併合/Annex(9ED)》を牧原の唯一の白マナを対象にキャストし、攻めの手を緩めない。
押せる時はとことん強気に、と。マジックの基本を忠実に守る。

それに引き換え牧原は土地が止まってしまい、踏んだり蹴ったりといった様子。
ディスカードを迫られてしまう。

何よりも土地が欲しい牧原は《ミューズの囁き/Whispers of the Muse(TSB)》を素打ちしてみたりと必死の様相。
そんな中、遂に牧原のアップキープに相澤が《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite(TSP)》を送り出す。

ここへ先ほどの《取り消し/Cancel(TSP)》が飛んでくるのは相澤も承知の上だろう。
これは無事に解決し、一命を取り留める牧原。
土地が真っ青だった牧原だが、《ミューズの囁き/Whispers of the Muse(TSB)》の恩恵あって白マナを引き込むことに成功する。

だが。

相澤は更に磐石にせんと追加の《併合/Annex(9ED)》
対象はもちろん牧原の白マナである。
これで牧原はまた青単に逆戻りだ。

相変わらず決め手を引かない相澤。
しばらく土地を置くのみでお互いドローゴーが続き…。

その最中、唐突にラウンド終了のコールが鳴り響く。
1本目に時間をかけすぎたために見えていた結果ではあるが。

その間にも牧原に再び《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite(TSP)》が襲い掛かる。
牧原はこれに対して《吸収するウェルク/Draining Whelk(TSP)》で抗うが、さらに駄目押しに《ザルファーの魔道士、テフェリー(TSP)》が登場!
《ザルファーの魔道士、テフェリー/Teferi, Mage of Zhalfir(TSP)》解決後に改めて相澤は《吸収するウェルク/Draining Whelk(TSP)》を《マナ漏出/Mana Leak(9ED)》で対処。

なんとか通した《赤の防御円/Circle of Protection: Red(9ED)》で《ボガーダンのヘルカイト/Bogardan Hellkite(TSP)》こそシャットアウトするものの…。
《ザルファーの魔道士、テフェリー(TSP)》が止まらない。

結局、最後まで相澤の優位は揺るがなかったが、それでも2本目を引き分けに留めたのは牧原の底意地だろうか。

当初の目論見どおり、相澤が勝利を果たす結果となった。
いやはや、試合時間50分と追加5ターンをフルに使い果たす大熱戦であった。

牧原にとっては残念な結果になってしまったが、かなりの健闘を見せたのではないだろうか。
素敵な試合を繰り広げてくれた両者のこれからに、幸あらんことを。


相澤 1-1-0 牧原

正直、一本目は負けたと思った、とは試合後の相澤の言。
それを顔に出さないあたりが流石という感じだ。

ちなみに相澤を苦しめた《ウルザの工廠/Urza's Factory(TSP)》は牧原のメインボードに3枚も投入されていたそうな。


Result: 相澤”AKKA”恵司 WIN!